高齢者向けリフォーム 契約後に安心!変更・解除に関する知っておきたいポイントと相談先
はじめに
大切なご自宅のリフォームは、信頼できる業者を選び、納得のいく契約を結ぶことが第一歩です。特に、暮らしをより快適で安全にするための高齢者向けリフォームは、計画段階から慎重に進められていることと思います。
しかし、契約後も、様々な事情で計画の変更が必要になったり、残念ながら予期せぬ問題が起きたりすることが全くないとは言い切れません。例えば、工事の途中で新たな課題が見つかったり、ご自身の体調やご家族の状況に変化があったりすることも考えられます。
もしもの時、「どうすれば良いの?」と慌ててしまわないように、契約後の変更や解除について事前に知っておくことは、安心につながります。この記事では、高齢者向けリフォームにおける契約後の変更や解除に関する知っておきたい基本的なポイントと、万が一の際に困ったときの相談先について、専門的でありながらも平易な言葉で、分かりやすく解説します。
契約内容の変更が必要になったら
リフォーム工事が進む中で、「やっぱり、ここに手すりを追加したい」「浴室の引き戸の色をカタログで見た色に変えたい」など、当初の計画から変更を希望することがあるかもしれません。
このような場合、まずは遠慮なく担当の業者さんに相談してみましょう。誠実な業者さんであれば、変更が可能か、費用はどのくらい増えるか、工期に影響はあるかなどを丁寧に説明してくれるはずです。
重要な注意点:
- 必ず業者と話し合い、変更内容は書面で確認しましょう。 口約束だけでは、「言った」「言わない」のトラブルにつながる可能性があります。変更内容、追加でかかる費用、工期が延びるかどうかなどを明確にした「変更契約書」や「覚書」といった書面を作成し、お互いが内容を確認してサインすることが大切です。これにより、後々の誤解を防ぎ、双方の合意に基づいた変更であることを明確にできます。
- 変更内容によっては、追加費用が発生する可能性があります。 計画になかった工事を追加したり、より高価な材料に変更したりすれば、当然ながら費用は増えます。なぜその費用がかかるのか、具体的な金額をしっかりと確認し、納得した上で変更契約を結んでください。見積もり内容について不明な点があれば、納得がいくまで業者に質問することが重要です。
例えば、「トイレに手すりを設置する」という契約だったが、工事中に「立ち上がりやすいように、もう一本、縦の手すりも付けたい」と思ったとします。この場合、追加する手すりの種類、設置にかかる費用、その費用が当初の見積もりに対してどのくらい増えるのか、工期への影響などを業者から説明を受け、具体的な金額を確認した上で、その内容を記した書面にサインするという流れになります。
契約を解除したい、工事をキャンセルしたい場合
やむを得ない事情で、契約したリフォーム自体を取りやめたい、あるいは工事を中断したいという状況になる可能性もゼロではありません。例えば、ご自身の体調が急に変化し、リフォームどころではなくなってしまった、といったケースが考えられます。
このような場合、どうすれば良いのでしょうか。
- 基本的に、自己都合での一方的な解除は難しいです。 リフォーム契約は、お客様と業者がお互いの合意に基づいて交わす大切な約束です。業者側は契約に基づき、材料の手配や職人さんの手配などを進めています。そのため、お客様の都合だけで一方的に「やっぱりやめます」と解除することは、原則として認められていません。多くのリフォーム契約では、契約後の自己都合による解除には「違約金」が発生する場合があります。「違約金」とは、契約を一方的に破棄した際に、相手方(この場合は業者)が被る損害を補償するために支払うお金のことです。 まずは、正直に業者に事情を話し、相談してみましょう。工事の進捗状況によっては、話し合いによって解決策が見つかったり、発生する費用が抑えられたりする可能性もあります。契約書に記載されている解除に関する条項や違約金について、改めて確認しておくことも重要です。
- 知っておきたい「クーリングオフ制度」 特定の取引方法で契約した場合にのみ適用される「クーリングオフ制度」というものがあります。これは、一度契約したり申込みをしたりした後でも、一定期間内であれば、無条件で契約の申込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。 ただし、すべてのリフォーム契約がクーリングオフの対象になるわけではありません。 クーリングオフ制度は、主に、業者が突然ご自宅に訪問してきて勧誘を行い、その場で契約を結んだ場合など、「特定商取引に関する法律」で定められた特定の取引方法(訪問販売など)に適用されます。また、お客様自身が店舗に出向いて契約した場合や、インターネット等で契約した場合、自分から業者に依頼して契約した(例えば、新聞広告を見て電話をかけたなど)場合は、原則としてクーリングオフの対象外となりますのでご注意ください。 クーリングオフができる期間は、契約書面を受け取った日を含めて8日以内です。この期間内であれば、書面で業者に通知することで、原則として違約金を支払うことなく契約を解除できます。クーリングオフの書面は、はがき等で、「特定記録郵便」や「簡易書留」など、送った証拠が残る方法で送ることをお勧めします。 例えば、突然自宅を訪問してきた業者に勧められ、ついその場で屋根のリフォーム契約を結んでしまったが、後から冷静に考えると不要だった、あるいは他の業者にも相談してみたくなった、というようなケースで、クーリングオフの対象となる可能性があります。 ご自身の契約がクーリングオフの対象になるか、また、その手続き方法については、契約書に記載されているか、業者に確認してください。不明な場合は、後述する消費生活センターにすぐに相談することをお勧めします。
業者側の都合やトラブルで工事が進まない・問題がある場合
契約通りに工事が進まない、約束した期日を過ぎても完成しない、工事に不備がある(例えば、設置した手すりがぐらつく、床の段差が解消されていないなど)、業者との連絡が取れなくなったなど、残念ながら業者側に問題があるケースも考えられます。
- まず、契約書の内容を再度確認してください。工事内容や品質、工期に関する取り決めがどうなっているかを確認します。そして、具体的な問題点や状況を業者に伝え、改善を求めましょう。連絡は、言った言わないを防ぐため、内容証明郵便など記録に残る形で行うことも検討できます。
- 誠実な業者であれば、真摯に状況を説明し、問題解決のために適切な対応策を提示してくれるはずです。例えば、工事のやり直しや、遅延に関する説明と代替案などです。
- しかし、業者から納得のいく対応が得られない場合や、連絡が取れなくなってしまった場合は、契約違反として契約を解除したり、損害の賠償を請求したりできる可能性があります。この場合の「契約違反」や「不備」は、法律上「契約不適合」と呼ばれることもあります。
- このようなケースでは、法的な知識が必要になる場合もあります。一人で悩まず、専門の相談窓口にアドバイスを求めることが非常に重要です。早めに相談することで、問題が大きくなる前に解決できる可能性が高まります。
契約後の安心のために確認しておきたいこと(チェックリスト)
リフォームの契約は結んだものの、後から「これで大丈夫かな」と不安になることもあるかもしれません。契約後に安心して工事を進めるために、以下の点を改めて確認しておくことをお勧めします。
- [ ] 契約書の内容をもう一度確認しましたか?特に、工事内容、金額、工期、支払い条件に加え、契約の変更や解除に関する条項(どのような場合に解除できるか、違約金はかかるかなど)について、目を通しておきましょう。
- [ ] 契約後の変更は、必ず業者と話し合い、書面(変更契約書や覚書など)で記録することを確認しましたか?口約束はトラブルの元です。
- [ ] クーリングオフ制度について理解しましたか?ご自身の契約が対象となる可能性があるか、もし対象なら手続き方法はどうするのか、改めて確認しておきましょう。
- [ ] 万が一、業者との連絡が取りづらくなったり、工事で問題が起きたりした場合の、会社の連絡先(担当者だけでなく、会社の代表窓口や会社の住所など)を確認しましたか?いつでも連絡が取れる窓口を確認しておくことが大切です。
- [ ] 少しでも不安な点や疑問に思うことがあれば、一人で悩まず、ご家族や信頼できる友人、そして後述する公的な相談窓口に話すことを決めましたか?早めに相談することが、トラブルを未然に防ぎ、または早期に解決するための鍵となります。
困ったときの相談先
リフォームに関する契約後の不安やトラブルは、決して一人で解決しようとせず、専門の相談窓口に連絡することをお勧めします。無料で相談できる窓口もありますので、気軽に利用してみてください。
- 消費生活センター: 消費者と事業者との間の様々なトラブルに関する相談を受け付けている公的な窓口です。リフォーム工事に関するトラブルについても、専門の相談員が状況を聞き取り、適切なアドバイスや、必要に応じてあっせん(話し合いを仲介すること)を行ってくれます。匿名でも相談可能で、全国どこからでも共通の電話番号 「188(いやや)」 にかけると、最寄りの消費生活センターにつながります。まずはここに相談してみるのが最も身近で利用しやすいでしょう。
- その他、リフォーム関連の業界団体が相談窓口を設けている場合や、各地の弁護士会が有料で法律相談を受け付けている場合もあります。
相談する際は、リフォームの契約書やこれまでの業者とのやり取りが分かる書類(見積書、図面、工事の進捗状況の写真、メール、手紙など)を手元に用意しておくと、相談員に状況をより正確に伝えられ、適切なアドバイスが得やすくなります。
まとめ
高齢者向けリフォームの契約は、より安全で快適な住まいを実現するための大切なプロセスです。契約を交わした後も、予期せぬ変更や問題が発生する可能性はゼロではありません。
しかし、契約後の対応について、変更が必要になった場合の進め方や、万が一のトラブルの際の解除の可能性、特にクーリングオフ制度について、事前に知識を持つこと、そしてご自身の契約書をよく読んで理解しておくことが大切です。
何よりも大切なのは、もし工事中に少しでも不安を感じたり、業者との関係で疑問に思ったり、トラブルの兆候があったりしたら、決して一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方、そして消費生活センターのような公的な相談窓口に早めに相談することです。適切なアドバイスやサポートを受けることで、安心してリフォームを完了させることができるでしょう。
この記事が、皆様の高齢者向けリフォームをより安心して進めるための一助となれば幸いです。